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今回は味覚障害の原因について深く掘り下げていきます。
①偏った食生活(病気による食事摂取不良も含む)による「亜鉛不足」
亜鉛は、味細胞の新陳代謝(生まれ変わり)に必須となる栄養素です。体内の亜鉛が不足すると、味蕾(味を感じる細胞)の新陳代謝が十分に
行われなくなって味覚障害が生じます。食品などに含まれる食品添加物は、食品中に含まれている亜鉛が体内に吸収されるのを妨げると言う報告もあります。
②「高齢」による味覚自体の減退
加齢とともに味を感じる機能が低下すると言われています。
60歳~70歳代をピークに味覚障害を訴える患者さんが増加し、実際に味覚障害を訴える患者さんの約半数は65歳以上の高齢者です。
③「嗅覚障害」による味覚の低下
例えば風邪などで鼻づまりを起こしている時に食べ物の味を感じなくなった経験は、どなたにもあるでしょう。
同様に風邪以外でも鼻の病気が原因で味覚障害を起こすことがあります。
嗅覚と味覚は密接に関係しているのです。その場合は嗅覚検査を行い、嗅覚治療をすることで改善を促します。
④表面の粘膜の異常 「口腔内のよごれ、虫歯、疲労、ストレス」
舌の表面には舌苔(ぜったい)という白い苔のようなものがごく薄くついています。
これは、舌の表面が剥がれたものや食べ物のカス、細菌などが溜まったものです。口腔内が汚かったり、虫歯があると味覚障害が現れます。
また、疲れたりストレスを感じたりすると、舌苔が厚くなったり色が変わったりして、舌の違和感や味覚障害を生じることがあります。
⑤「お薬の副作用」や「がんの治療」
血圧を下げる薬や鎮痛・解熱薬、抗アレルギー楽、消化性潰瘍(かいよう)治療薬、精神科の薬――などごく一般的なお薬が味覚障害の原因となり得ます。
また、がんで抗がん剤化学療法を受けている患者さんの3~5割、頭頸部のがんで放射線治療を受けている患者さんのほとんどに味覚障害がみられます。
⑥「味を感じる神経」の障害
舌の感覚に関係する神経としては、顔面神経(鼓索神経)、三叉神経(舌神経)、舌咽神経があり、味覚や感覚にかかわっています。
顔の運動を支配している顔面神経に麻痺が起こる(=顔面神経麻痺)と、同時に味覚障害も起こすことがあります。
顔面神経麻痺の原因にはいろいろありますが、一番多いのは、ベル麻痺とよばれる特発性の病気です。ベル麻痺は明らかな原因がないのに急に起きるもので、循環障害による神経の腫れによるものではないかと考えられています。
次に多いのはヘルペスウイルスによる神経炎です。
そのほか、稀に中耳炎による神経炎や耳下腺の悪性腫瘍も原因となります。
まず、全体的な診察の上で、それぞれの症状にあった原因を推測し、治療を開始します。
診察内容:
舌の萎縮(いしゅく)や乾燥はないかを観察したり、問診で服用中の薬物の有無や種類を伺います。
舌の感染を心配される際には、培養検査を行い菌の有無を確認します。また、総合病院では採血をして血液中の亜鉛の値の計測などもしながら、味覚障害の原因を突き止めます。
まず治療として最優先となる病気がある場合(鼻炎、副鼻腔炎、顔面神経麻痺、口腔感染症などの味覚障害を引き起こす病気)は、 その病気の治療を第一に行います。 また、薬剤性が疑われる場合には、薬剤の中止や調整を試みます。
その後、それぞれの症状に合わせた治療を相談の上開始します。 味覚障害で一例を挙げると、亜鉛の欠乏が分かった場合は亜鉛を補充する飲み薬を内服していただきますが、積極的に亜鉛を多く含む食品を摂取することも大切です。 亜鉛を多く含む食品には、牡蠣(かき)や煮干しなどの魚介類、牛肉、のりやワカメなどの海藻、ゴマやカシューナッツなどのナッツ類、 高野豆腐やきな粉などの大豆加工品、チーズや脱脂粉乳などの乳製品、抹茶やココアなどの飲み物――などがあります。